📖脈経

『脈経』王叔和譔 (巻第三)⑫ ~脈診の原典~

肺大腸部 第四(3/3)

黄帝問て曰く、秋の脈、浮の如し、何如して浮なるや。
岐伯対して曰く、秋の脈は肺なり。西方の金なり。万物の収成する所以なり。故に其の気来たること軽虚にして浮、其の気来ること急にして去ること散。故に浮と曰う。此に反する者は病む。
黄帝曰く、何如して反するや。
岐伯曰く、其の気来たること毛にして中央堅く、両旁虚なり。此を太過と謂う。病、外に在り。其の気来たること毛にして微なり、此を不及と謂う。病、中に在り。
黄帝曰く、秋の脈、太過なると不及なると、其の病いかん。
岐伯曰く、太過なるときは人をして気逆して、背痛み温温然たらしむ。不及なるときは人をして喘し、呼吸少気にして咳して、上気して血を見し、下に病音聞く。

肺の脈、来ること厭厭えんえん聶聶じょうじょうとして榆莢を落るが如くなるを肺の平と曰う。秋は胃の気を以って本と為す。
肺の脈、来ること上ならず下ならず、鶏羽を循るが如くなるを肺病と曰う。
肺の脈、来ること物の浮ぶが如く、風の毛を吹くが如くなるを肺死すと曰う。

真肺の脈至ること大にして虚、毛羽を以って人の膚に中るが如し。色、赤白にして沢あらず。毛折れて乃ち死す。

秋の胃は微毛を平と曰う。
毛多くして胃少を肺病と曰う。
但、毛のみにして胃なきを死と曰う。
毛にして弦有るを春病と曰う。
絃甚しきを今病と曰う。

肺は気を蔵し、気は魄を舎す。
喜楽して極まりなきは則ち魄を傷り、魄傷るときは狂す。狂者は意人に存せず。皮革焦げ、毛悴れ、色夭して、夏に死す。

秋は金肺王す。其の脈は浮濇にして短なるを平脈と曰う。
反して洪大にして散を得る者は、是れ心の肺に乗じ火の金を克するなり。賊邪、大逆と為す。十死治せず。
反して沈濡にして滑を得る者は、是れ腎の肺に乗じ子の母を扶くるなり。実邪と為す。病と雖ども自ら愈ゆ。
反して大にして緩を得る者は、是れ脾の肺に乗じ母の子に帰するなり。虚邪と為す。病と雖ども治し易し。
反して絃細にして長を得る者は、是れ肝の肺に乗じ木の金を陵ぐなり。微邪と為す。病と雖ども即ち瘥ゆ。
肺の脈来ること汎汎として軽して微風鳥の背上の毛を吹くが如く、再至を平と曰う。
三至を離経と曰い病む。四至は脱精、五至は死、六至は命尽く。手の太陰の脈なり。

肺の脈、急甚だしきは癲疾を為す。微急なるは、肺の寒熱、怠堕、咳して唾血し、腰背と胸に引き、鼻息肉ありて通ぜずを苦しむ、を為す。
緩甚だしきは、多汗と為し、微緩は痿、偏風、頭以下汗出て止まるべからずと為す。
大甚だしきを脛腫と為し、微大を肺痺、腰内に起こり胸背に引くと為す。
小甚だしきを飧泄と為し、微小を消癉と為す。
滑甚だしきを息賁上気と為し、微滑を上下出血と為す。
濇甚だしきを嘔血と為し、微濇を鼠瘻と為す。頸と支腋の間に在り、下の其の上に勝えず、其の能の酸を喜ぶ。

手の太陰の気、絶するときは皮毛焦る。
太陰は気を行して皮毛を温る者なり。
気営えざるときは皮毛焦る。皮毛焦るときは津液去る。津液去るときは皮節傷る。
皮節傷る者は則ち爪枯れ毛折る。毛折る者は則ち気先死す。
ひのえに篤く、ひのとに死す。火は金に勝つなり。
肺の死蔵、之を浮べれば虚、之を按ば弱、蔥葉の如にして下に根なき者は死す。
 右、素問、鍼経、張仲景


【メモ】
温温然:気が塞がり、のびやかでない様子。

原文

肺大腸部第四(3/3)
黃帝問曰秋脉如浮何如而浮岐伯對曰秋脉肺也
西方金也萬物之所以收成也故其氣來輕虚而浮
其氣 來急去散故曰浮反此者病黃帝曰何如而反
岐伯曰其氣來毛而中央堅兩旁虚此謂太過病在
外其氣來 毛而微此謂不及病在中黃帝曰秋脉太
過與不及其病何如岐伯曰太過則令人氣逆而背
痛溫溫[1]然不及則令人喘呼吸少氣而欬
上氣見血下聞病音
肺脉來厭厭聶聶如落榆莢曰肺平秋以胃氣爲本
[2]肺脉來不上不
下如循雞羽曰肺病[3]肺脉來如物之浮如風
吹毛曰肺死
真肺脉至大而虚如以毛羽中人膚色赤白不澤毛
折乃死秋胃微毛曰平毛多胃少曰肺病但毛無胃
曰 死毛而有絃曰春病絃甚曰今病
肺藏氣氣舍魄喜樂無極則傷魄魄傷則狂狂者意
不存人皮革焦毛悴 色夭死於夏秋金肺王其脉浮[4]
濇而短曰平脉反得洪大而散者[5]
是心之 乗肺火之刻金爲賊邪大逆十死不治[6]
反得沈濡而滑者是腎之乗肺子 之扶母
爲實邪雖病自愈反得大而緩者是脾之乗肺母之
歸子爲虚邪雖病易治反得絃細而長者是肝之乗
肺木之陵金爲微邪雖病即瘥肺脉來汎汎輕如微
風吹鳥背上毛再至曰平三至曰離經病四至脫精
五至死六至命盡手太隂脉也
肺脉急甚爲癲疾微急爲肺寒熱怠墮欬唾血引腰
背胷苦鼻息肉不通緩甚爲多肝微緩爲痿偏風[7]
頭以下汗出不可止太甚爲脛腫微大爲肺痺引
胷背起腰内小 甚爲飧泄微小爲消癉滑甚爲息賁
上氣微滑爲上下出血濇甚爲嘔血微濇爲鼠瘻在
頸支掖之間下不勝其上其能喜酸
手太隂氣絶則皮毛焦太隂者行氣溫皮毛者也氣
弗營則皮毛焦皮毛焦則津液去津液去 則皮節傷
皮節傷者則爪[8]枯毛折毛折者則氣[9]
先死丙篤丁死火勝金也
肺死藏浮 之虚按之弱如蔥葉下無根者死
    右素問鍼經張仲景

注釈
[1] ^ : 内經溫溫作慍慍
[2] ^ : 難經云厭厭聶聶如循榆葉曰春平脉藹藹如車蓋按之益大曰秋平脉
[3] ^ : 巢源無不字
[4] ^ : 千金浮作微
[5] ^ : 千金作浮大而洪
[6] ^ : 一本云日月年數至四忌丙丁
[7] ^ : 一作漏風
[8] ^ : 爪字一作皮
[9] ^ : 氣字一作毛

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底本:『脈経 仿宋何大任本』北里大学東洋医学総合研究所医史学研究部・日本内経医学会
参考:『王叔和脉経』京都大学附属図書館所蔵

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