『脈経』王叔和譔 (巻第一)⑭ ~脈診の原典~

平 人病を得るの所起 第十四

何を以って春に病を得るを知るや。
肝脈無きことなり。
心脈無きは、夏に病を得る。
肺脈無きは、秋に病を得る。
腎脈無きは、冬に病を得る。
脾脈無きは四季の月に病を得る。

仮令ば、肝病は西行して、若しくは鶏肉を食して之を得る。
当に秋時を以って発し、病を得て庚辛の日を以ってすべし。
家に腥死女子有り、之を見て以って明要、災を為す。
しからずんば、若しくは金銀の物に感じて之を得ん。

仮令ば、脾病は東行して、若しくは雉兔の肉、及び諸木の果実を食いて之を得る。
しからずんば、当に春時を以って病を得て発っし、甲乙の日を以ってすべし。

仮令ば、心病は北行して、若しくは豚魚を食いて之を得る。
しからずんば、当に冬時を以って病を得て発っし、壬癸の日を以ってすべし。

仮令ば、肺病は南行して、若しくは馬肉、及び麞鹿の肉を食いて之を得る。
しからずんば、当に夏時を以って病を得て発っし、丙丁の日を以ってすべし。

仮令ば、腎病は中央にして、若しくは牛肉及び諸の土中の物を食いて之を得る。
しからずんば、当に長夏時を以って病を得て発っし、戊己の日をもってすべし。

仮令ば、王脈を得るは、当に県官の家にて之を得るべし。
仮令ば、相脈を得るは、当に嫁娶の家にて之を得る、或いは相慶賀の家で之を得るべし。
仮令ば、胎脈を得るは、当に産乳の家にて之を得るべし。
仮令ば、囚脈を得るは、当に囚徒の家にて之を得るべし。
仮令ば、休脈を得るは、其の人素より宿病有り、治せずして自愈。
仮令ば、死脈を得るは、当に死喪の家にて感傷して之を得るべし。

何を以ってか人の露臥して病を得ることを知らん。
陽中に陰有ればなり。

何を以ってか人の夏月に病を得ることを知らん。
諸陽、陰に入ればなり。

何を以ってか人の食飲毒に中るを知らん。
之を浮べて陽無く微細、之知ることあたわざればなり。
但し、陰脈のみ有りて、来ること疾く、去ること疾きは、此れ水気の毒と相為す。
脈遅なるは乾物を食いて之を得る。

原文

平人得病所起第十四
何以知春得病無肝脉也無心脉夏得病無肺脉秋
得病無腎脉冬得病無脾脉四季之月得病
假令肝病者西行若食雞肉得之當以秋時發得病
以庚辛日也家有腥死女子見之以明要爲災不者
若感金銀物得之
假令脾病東行若食雉兔肉及諸木果實得之不者
當以春時發得病以甲乙日也
假令心病北行若食豚魚得之不者當以冬時發得
病以壬癸日也
假令肺病南行若食馬肉及麞鹿肉得之不者當以
夏時發得病以丙丁日也
假令腎病中央若食牛肉及諸土中物得之不者當
以長夏時發得病以戊己日也
假令得王脉當於縣官家得之
假令得相脉當於嫁娶家得之或相慶賀家得之
假令得胎脉當於產乳家得之
假令得囚脉當於囚徒家得之
假令得休脉其人素有宿病不治自愈
假令得死脉當於死喪家感傷得之
何以知人露臥得病陽中有隂也
何以知人夏月得病諸陽入隂也
何以知人食飲中毒浮之無陽微細之不可知也但
有隂脉來疾去疾此相爲水氣之毒也脉遲者食乾
物得之

広告

底本:『脈経 仿宋何大任本』北里大学東洋医学総合研究所医史学研究部・日本内経医学会
参考:『王叔和脉経』京都大学附属図書館所蔵

この記事へのコメント