『脈経』王叔和譔 (巻第三)⑭ ~脈診の原典~

腎膀胱部 第五 (2/3)

腎は北方の水なり。
万物の蔵する所。
百虫伏蟄す。
陽気下陥し、陰気上升す。
陽気中出し、陰気烈して霜と為る。
遂に上升せず、化して雪霜と為る。
猛獣伏蟄し、蜾虫匿蔵す。
其の脈を沈と為す。
沈は陰と為し裏に在り。
発汗すべからず。
発するときは蜾虫出でて其の霜雪を見る。
陰気表に在りて陽気臓に在り。
慎しみて下すべからず。之を下す者は脾を傷り、脾土弱なれば、即ち水気妄行す。
之を下す者は魚の水を出で蛾の湯に入るが如し。
重客裏に在り。慎しみて熏ずべからず。之を熏ずるは客を逆して其の息は則ち喘す。
持する無しは客熱、口をして爛瘡せしむ。
陰脉且解し、血散して通ぜざれば、正陽遂に厥して陰往従せず。
客熱狂入すれば内に結胸を為す。
 右、四時経。

原文

腎膀胱部第五 (2/3)

腎者北方水萬物之所藏[1]
百蟲伏蟄[2]陽氣下
陷隂氣上升陽氣中出隂氣烈爲霜遂不上升化爲
雪霜猛獸伏蟄蜾蟲匿藏[3]
其脉爲沈
沈爲隂在裏不可發汗發則蜾蟲出見其霜雪[4]
隂氣在表陽氣在藏慎不可
下下之者傷脾脾土弱即水氣妄行[5]
下之者如
魚出水蛾入湯[6]重客在裏
慎不可熏熏之逆客其息則喘[7]
無持客熱令口爛瘡[8]
隂脉且解血散不通正
陽遂厥隂不往從[9]
客熱狂入内爲結胷[10]
氣遂弱清溲痢通[11]
    右四時經

注釈
[1] ^ : 冬則北方用事王在三時之後腎在四蔵之下故王北方也萬物春生夏長秋収冬藏
[2] ^ : 冬伏蟄不食之蟲言有百種也
[3] ^ : 陽氣下陷者謂降於土中也其氣猶越而昇出隂氣在上寒盛陽氣雖昇出而不能自致因而化作霜雪或謂陽氣中出是十月則霜降猛獸伏蟄者蓋謂龍蛇冬時而潜處螺蟲無毛甲者得寒皆伏蟄逐陽氣所在如此避氷霜自温養也
[4] ^ : 陽氣在下故冬脉沈温養於藏府此爲裏實而表虚復從外發其汗此爲逆治非其法也猶百蟲伏蟄之時而反出土見於冰霜必死不疑逆治者死此之謂也
[5] ^ : 陽氣在下温養諸藏故不可下也下之既損於陽氣而脾胃復傷土以防水而今反傷之故令水得盈溢而妄行也
[6] ^ : 言治病逆則殺人如魚出水蛾入湯火之中立死
[7] ^ : 重客者猶陽氣也重者尊重之貌也陽位尊處於上今一時在下非其常所故言客也熏謂焼鍼及以湯火之輩熏發其汗如此則客熱從外入與陽氣相薄是爲逆也氣上熏胷中故令喘息
[8] ^ : 無持者無以湯火發熏其汗也熏之則火氣入裏爲客熱故令其口生瘡
[9] ^ : 血行脉中氣行脉外五十周而復會如環之無端也血爲隂氣爲陽相須而行發其汗使隂陽離別脉爲解散血不得通厥者逆也謂陽氣逆而不復相朝使治病失所故隂陽錯逆可不慎也
[10] ^ : 隂陽錯亂外熱狂入留結胷中也
[11] ^ : 脾主水穀其氣微弱水穀不化下痢不息清者厠也溲從水道出而反清溲者是謂下痢至厠也

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底本:『脈経 仿宋何大任本』北里大学東洋医学総合研究所医史学研究部・日本内経医学会
参考:『王叔和脉経』京都大学附属図書館所蔵

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