『脈経』王叔和譔 (巻第一)⑪ ~脈診の原典~

従横逆順伏匿の脈 第十一

問うて曰く、脈に相乗すること有りて、従有り、横有り。逆有り、順有り。何の謂ぞや。
師曰く、水行きて火に乗じ、金行きて木に乗ずるを名づけて従と曰う。
火行きて水に乗じ、木行きて金に乗ずるを名づけて横と曰う。
水行きて金に乗じ、火行きて木に乗ずるを名づけて逆と曰う。
金行きて水に乗じ、木行きて火に乗ずるを名づけて順と曰う。

経に言う、脈に伏匿有りとは、何れの臓に伏匿して伏匿と言うや。
然り、謂ゆる陰陽、更に相乗し、更に相伏するなり。
脈陰部に居して反って陽脈を見るは、陽、陰に乗ずと為すなり。脈時に沈渋にして短と雖ども、此れ陽中の伏陰なり。
脈陽部に居して反って陰脈を見るは、陰、陽に乗ずと為すなり。脈時に浮滑にして長と雖ども、此れ陰中と伏陽と為すなり。
重陰の者は癲し、重陽の者は狂す。脱陽の者は鬼を見、脱陰の者は目盲す。


【メモ】
前半は『傷寒論』より。
後半は『難経』二十難より。

原文

從橫逆順伏匿脉第十一
問曰脉有相乗有從[1]有橫有逆有順何謂
也師曰水行乗火金行乗木名曰從火行乗水木行
乗金名曰橫水行乗金火行乗木名曰逆金行乗水
木行乗火名曰順
經言脉有伏匿者伏匿於何藏而言伏匿也然謂隂
陽更相乗更相伏也脉居隂部反見陽脉者爲陽乗
隂也脉雖時沈澀而短此陽中伏隂脉居陽部反見
隂脉者爲隂乗陽也脉雖時浮滑而長此爲隂中伏
陽也重隂者癲重陽者狂脫陽者見鬼脫隂者目盲

注釈
[1] ^ : 仲景從字作縱字

広告

底本:『脈経 仿宋何大任本』北里大学東洋医学総合研究所医史学研究部・日本内経医学会
参考:『王叔和脉経』京都大学附属図書館所蔵

この記事へのコメント