天府 ～現役鍼灸師によるツボの解説～

こんにちは、鍼灸やまと治療院です。
今回は、肺経の経穴「天府」について記載します。

経穴の説明

「天府」は「てんぷ」と読み、手の太陰肺経の３番目の経穴です。
WHOのコードは「LU3」です。
旧字体でも「天府」、現代の中国語の簡体字でも「天府」と書きます。
この経穴も左右二穴あります。
卒中、気管支炎、鼻血、嘔吐、眼疾、眩暈等に使用します。
現代では禁灸穴ではありませんが、甲乙経などでは禁灸穴になっていますので、灸はしない方が良いでしょう。

経穴の場所

正式な部位は以下の通りとなります。

上腕前外側、上腕二頭筋外側縁、腋窩横紋前端の下方３寸。
引用:WHO西太平洋地域事務局著,第二次日本経穴委員会訳『WHO/WPRO標準経穴部位－日本語公式版－』医道の日本社,2009年,p.27

※位置を示す「寸」というのは、経穴の位置などを表す長さの基準（骨度法・同身寸法）によるもので、一般的な「１寸≒３cm」とは異なります。

ちなみに私が習った頃は、「上腕二頭筋の筋溝に取る」と習っていたのですが、これも変更になったようです。

古典における記載例

古典では以下のように記されています。

鍼灸甲乙経

【原文】
天府在腋下三寸臂臑内廉動脉中手太陰脉氣所發禁不可灸灸之令人逆氣刺入四分留三呼
【書き下し文】
天府、腋下三寸、臂臑の内廉、動脈の中に在り。手太陰の脉の気、発する所。
灸すべからず禁ず。之に灸すれば、人をして逆気しむ。
刺入四分、留むること三呼。
引用:皇甫謐著『黄帝三部針灸甲乙経』259年頃

医心方

【原文】
天府　二穴
在腋下三寸、臂臑内廉動脈。禁不可灸。
刺入四分、留三呼。
主：欬、上気、不得息、暴癉内逆、肝肺相搏、鼻口出血、身脹、喘喝、嗜臥不覚。
【書き下し文】
天府　二穴
腋下三寸、臂臑の内廉、脈動ずるところに在り。灸すべからず禁ず。
刺入四分、留むること三呼。
主：欬、上気、不得息、暴癉内逆、肝肺相搏、鼻口出血、身脹、喘喝、嗜臥不覚。
引用:丹波康頼著『医心方』984年