雲門 ～現役鍼灸師によるツボの解説～

こんにちは、鍼灸やまと治療院です。
今回は、肺経の経穴「雲門」について記載します。

経穴の説明

「雲門」は「うんもん」と読み、手の太陰肺経の２番目の経穴です。
WHOのコードは「LU2」です。
なお、現代の中国語の簡体字では「云门」と書きます。
気管支炎、咳嗽、扁桃炎、肩背の神経痛等に使用します。

経穴の場所

正式な部位は以下の通りとなります。

前胸部、鎖骨下窩の陥凹部、烏口突起の内方、前正中線の外方６寸。

引用:WHO西太平洋地域事務局著,第二次日本経穴委員会訳『WHO/WPRO標準経穴部位－日本語公式版－』医道の日本社,2009年,p.26

※位置を示す「寸」というのは、経穴の位置などを表す長さの基準（骨度法・同身寸法）によるもので、一般的な「１寸≒３cm」とは異なります。

古典における記載例

古典では以下のように記されています。

鍼灸甲乙経

【原文】
雲門 在巨骨下 氣戸兩傍各二寸陷者中 動脉應手 太陰脉氣所發 舉臂取之 刺入七分 灸五壯 刺太深令人逆息

【書き下し文】
雲門、巨骨の下、気戸の両傍、各二寸、陥なる中に在り。動脈手に応ず。太陰脉の気発する所。臂を挙げて之を取る。
刺入七分、灸五壯。太く深く刺さば、人をして逆息しむ。

引用:皇甫謐著『黄帝三部針灸甲乙経』259年頃

医心方

【原文】
雲門　二穴
在巨骨下気戸両旁各二寸陥者中、挙臂取之。
注云、巨骨謂是缺盆下畔横大骨也。
刺入七分。灸五壮。
主：喉痺、胸中暴逆、欬逆喘、胸中熱、心腹痛。

【書き下し文】
雲門　二穴
巨骨の下、気戸の両旁、各二寸、陥なる中に在り。臂を挙げて之を取る。
注に云う、巨骨と謂うは是れ缺盆の下畔、横の大骨なり。
刺入七分。灸五壮。
主：喉痺、胸中暴逆、欬逆喘、胸中熱、心腹痛。

引用:丹波康頼著『医心方』984年

十四経発揮

【原文】
雲門在巨骨下挾氣戸傍二寸陷中動脈應手擧臂取之

【書き下し文】
雲門、巨骨の下、気戸の傍を挟むこと二寸、陥中に在り。動脈手に応ず。臂を挙げて之を取る。

引用:滑寿著『十四経発揮』1341年

鍼灸重宝記

雲門
二穴。結喉の下五寸、左右へ六寸づつ陥中。針三分、灸五壮。
傷寒、手足熱し、気のぼり心胸をつき、脇より背にとをりて痛み、肘をあぐること能わず、喉痺、しゃくり、短気、癭気を治す。

引用:本郷正豊著『鍼灸重宝記』1718年