『療治之大概集』の意訳④ | 江戸時代の鍼灸書

こんにちは、鍼灸やまと治療院です。『療治之大概集』の4回目です。
ここは、現代の常識では「ちょっとどうなの・・・?」と思いますが、当時の考え方がわかりますので、参考にしてください。なお、現代では年の干支程度(十二支のみ、十干は殆ど使われない)しか生活で使わないのでわかりにくいと思います。日ごとの干支がわかる暦があると理解しやすいでしょう。

鍼灸用ひざる日の事 血忌なり

【原文】

鍼灸用ひざる日の事 血忌なり
丑未、寅申、卯酉、辰や戌、巳と亥、午子は血忌なりけり。

【意訳】

鍼灸治療をしてはいけない日の事(血忌日)
一月節は「丑の日」、二月節は「未の日」、三月節は「寅の日」、四月節は「申の日」、五月節は「卯の日」、六月節は「酉の日」、七月節は「辰の日」、八月節は「戌の日」、九月節は「巳の日」、十月節は「亥の日」、十一月節は「午の日」、十二月節は「子の日」が血忌日となる。

【補足説明】

血忌日について、当時は常識として知っていたのでしょうが、現代人の私たちには原文の説明だけでは分かりません。ここで書いている月節は、以下の様に区切ります。
 一月節:立春(2/4頃)~
 二月節:啓蟄(3/5頃)~
 三月節:清明(4/5頃)~
 四月節:立夏(5/5頃)~
 五月節:芒種(6/6頃)~
 六月節:小暑(7/7頃)~
 七月節:立秋(8/8頃)~
 八月節:白露(9/8頃)~
 九月節:寒露(10/8頃)~
 十月節:立冬(11/7頃)~
 十一月節:大雪(12/7頃)~
 十二月節:小寒(1/5頃)~

血支日の事 灸せざる日なり

【原文】

血支日の事 灸せざる日なり
寅より順に繰るなり。

【意訳】

血支日の事(灸をしてはいけない日)
一月節が寅の日で、順番に繰り上げていくものである。

【補足説明】

これだけだとわかりにくいので、一覧を記載しておきます。
 一月節:寅の日
 二月節:卯の日
 三月節:辰の日
 四月節:巳の日
 五月節:午の日
 六月節:未の日
 七月節:申の日
 八月節:酉の日
 九月節:戌の日
 十月節:亥の日
 十一月節:子の日
 十二月節:丑の日

十二支人神有り所の事 灸を禁む

【原文】

十二支人神有り所の事 灸を禁む
一、子の日は目、丑は腰耳、寅は胸、卯は鼻、辰は腰、膝の中、巳は手、午は神、未は頭、手、申は頭、脊中、酉も脊中、戌は頭、顔、亥は頭、項。

【意訳】

日付の十二支と人神の部位について
日付の十二支ごとに人神の位置が変わる。そのため以下に関連する場所には灸をしてはならない。
子の日は目、丑の日は腰・耳、寅の日は胸、卯の日は鼻、辰の日は腰・膝、巳の日は手、午の日は心、未の日は頭・手、申の日は頭・背中、酉の日は背中、戌の日は頭・顔、亥の日は頭・項。

十二時人神の事 灸を禁む

【原文】

十二時人神の事 灸を禁む
一、子の時は足の内踝にあり。丑は頭、寅は耳、卯は顔、辰は項、巳は乳、午は腹、羊は腹、申は神、酉は脊中、戌は腰、亥は股に在り。

【意訳】

十二時の人神の部位について
時間ごとの人神の部位を以下に示す。この部位には灸をしてはならない。
 子の時(23時~1時):内果
 丑の時(1時~3時):頭
 寅の時(3時~5時):耳
 卯の時(5時~7時):顔
 辰の時(7時~9時):項
 巳の時(9時~11時):乳
 午の時(11時~13時):腹
 未の時(13時~15時):腹
 申の時(15時~17時):心
 酉の時(17時~19時):背中
 戌の時(19時~21時):腰
 亥の時(21時~23時):股

四季の人神の事 灸を禁む

【原文】

四季の人神の事 灸を禁む
一、春は左の脇、夏は臍、秋は右の脇、冬は腰に在り。

【意訳】

四季と人神の部位について
季節ごとの人神の部位を示す。この部位には灸をしてはならない。
 春:左脇
 夏:臍
 秋:右脇
 冬:腰

長病日の事 灸せざる日なり

【原文】

長病日の事 灸せざる日なり
一、初五六や中の四五八地蔵日、末の七九は死病、長病。

【意訳】

長病日について
以下に述べる日は灸をしてはならない。
5日、6日、14日、15日、18日は地蔵日、27日、29日は死んでしまったり、長患いになったりする。

【補足説明】

ここの日付は普通に旧暦で良いのかどうかは暦の知識不足です。
内容自体は気にする必要はないでしょうが・・・。

男女に灸を禁む日の事

【原文】

男女に灸を禁む日の事
一、男は除の日、女は破の日なり。

【意訳】

男女の禁灸日
男性は、十二直の「除」の日、女性は「破」の日に灸をしてはならない。

【補足説明】

暦をみれば十二直がわかります。

病人初めて医師に遇ふ吉日の事

【原文】

病人初めて医師に遇ふ吉日の事
一、卯寅丑、子や亥の戌に酉や申未の午に巳辰なりけり。

【意訳】

医者にかかり始めるのに良い吉日
一月節は卯の日、二月節は寅の日、三月節は丑の日、四月節は子の日、五月節は亥の日、六月節は戌の日、七月節は酉の日、八月節は申の日、九月節は未の日、十月節は午の日、十一月節は巳の日、十二月節は辰の日。

【補足説明】

このようなことは気にせずに、具合が悪い時はすぐに診てもらいましょう。


今回はここまでです。

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