『療治之大概集』の意訳② | 江戸時代の鍼灸書

こんにちは、鍼灸やまと治療院です。『療治之大概集』のつづきです。

四季鍼の事

【原文】

四季鍼の事
一、春夏は浅く刺し、秋冬は深く刺す。然されば、春夏は陽気上に在り人の気もまた上に在り、故に浅く刺す。秋冬は陽気下に在り人の気もまた下に在り、故に深く刺す。是、四季に鍼を用る浅深の法なり。

【意訳】

四季に応じたの鍼の刺し方
一、春夏は鍼を浅く刺し、秋冬は深く刺す。春夏は陽気が多く、人体の気が表面近くにある。したがって鍼を浅く刺すのである。秋冬は、陽気が少なく、人体の気が深い部位にある。このため、鍼を深く刺すのである。これが、四季に応じた刺鍼時の深浅の使い分け方である。

【補足説明】

ここでは、季節に応じた刺鍼の深さの変化を説明しています。


男女立様の事

【原文】

男女立様の事
一、男は陽にして気外に甚だし。鍼する時は手を軽くその穴を押てその鍼を浅く刺し
一、女は陰にして気内に甚だし。鍼する時は手を重くその穴を押てその鍼を深く刺すなり。

【意訳】

性別による刺鍼の注意点
一、男性は「陽」であり、外側の気が多い。刺鍼時に経穴を軽く押さえて浅く刺すこと。
一、女性は「陰」であり、内側の気が多い。刺鍼時に経穴を強く押さえて深く刺すこと。

【補足説明】

ここでは、性別による鍼の刺し方の注意点を記載してます。


鍼折れたる時の事

【原文】

鍼折れたる時の事
一、腹の中にて鍼折れたる時は押手引かざる者なり。鍼の折れ口腹の皮と均ひとしく折るるは、先ず押手を以て強く押し出す者なり。折れ口皮一分計り内に在る時は病人少しも動かさずしてその穴より下に鍼刺す、自然に出るものなり。若し病人少しも動けば折れ鍼横に成り出ざるものなり。又、腹何いずれの穴にて鍼折るとも気海の穴の旁かたわら、各々おのおの三寸半の所、折れ鍼の方へ刺す。折れ鍼自然に銷とけるなり。折れ鍼内へ引く時は神闕に刺す。男は逆女は順なり。鍼折れて肉の内に在る時は鼠の脳を摧くだき傅ぬり出る。又は白梅を噛て傅り出るものなり。

【意訳】

折鍼時の対処方法
腹部に刺鍼中に鍼が折れた時は、押手を外してはいけない。皮膚の高さで折れた場合は、押手で強く押して、押し出しなさい。一分程度内部で折れた場合は、患者を動かさずに、折鍼部の下に別の鍼を刺すこと。こうすると自然に出てくるものである。患者が少しでも動いてしまうと、折れた鍼が横を向いてしまい、出てこなくなってしまう。
腹部の経穴で折鍼した場合、気海穴の横三寸半の所から折鍼部に向けて刺鍼すれば、折れた鍼は自然に溶けるものである。
折れた鍼を内に引くには神闕穴に刺鍼するとよい。男性は逆、女性は順の向きで刺すこと。
鍼が肉の中で折れた場合は、鼠の脳を砕いたものか白梅を噛んだものを塗ると出てくるものである。

【補足説明】

折鍼時の対処方法を記載しています。現代では問題のあることもありますが、参考までに。


抜けざる鍼の事

【原文】

抜けざる鍼の事
一、鍼立て後、抜けざる事有り。病人の気、逼せまる故なり。先ず病人の心を鎮め気を弛ゆるくせしめ次に我心を静め病人と話などして鍼口を少し扣たたき又刺し入れて抜くなり。自然斯かくの如くしても抜けざる時は何いずれの穴にても其その経の下一寸程に又餘の鍼を刺す。十に一も抜けずと云う事無し。

【意訳】

抜鍼困難時の対処方法
刺鍼した鍼が抜けなくなることがある。これは患者の気が集まってしまっているからである。まず、患者の精神を鎮め、気を弛める。次に自分自身の精神も落ち着かせて、患者と話しをしたりしながら、鍼口を少し叩いたり、少し刺入したりしてから抜けばよい。これでも抜けない場合は、どの経穴でもその経脈の一寸ほど下に別の鍼を刺鍼すればよい。こうすれば十に一つも抜けないことはないのである。

【補足説明】

ここは抜鍼困難時の対処方法が書かれていますね。現代でも普通に使えますね。


鍼立て違いの事

【原文】

鍼立て違いの事
一、何れの所にても鍼立てて後筋張り痛む事有り。鍼跡に気の滞とどこおる故なり。
一、何れの穴にても其の経の上か下か一寸程間をおき立てる時は必ず直るなり。

【意訳】

刺鍼後の問題
どこの部位であっても、刺鍼後に筋肉が張って痛くなることがある。これは刺鍼部位の気の滞りが原因である。
この場合、痛む部位から経脈にそって上か下に一寸程度ずらした場所に鍼をすればよい。これで必ず治るものである。

【補足説明】

刺鍼部に痛みが出た際の対処方法です。これも参考に使えますね。


今回はここまでです。

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