経絡要穴④・肘手の部/『鍼灸重宝記』本郷正豊著(13)

肘手の部

極泉

二穴。肘を脇に下げ付くれば、肘と肩二つに折る横文のかしら、すこし胸の方へ押し入れてとる、筋肉の間、動脉のある処なり。針三分灸七壮。
肘手足冷あがり、心脇いたみ、煩れ、乾嘔し、悲み多く発るを治す。

天府

二穴。極泉の下三寸筋骨の間に動脉ある処なり、下の尺沢を目あてにして点す。禁灸、針四分留ること七呼、或は三呼。
卒中風、邪気、つきもの、悪疰、鬼語、めまひを治す。

侠白

二穴。天府の下二寸動脉の処也。針三分灸五壮。
心痛、短気、乾嘔、心煩を治す。

尺沢

二穴。肘の中屈伸する横文の中、中指と無名指との間の通り、推せば筋骨の解め動脉の処。針灸ともに肘の中の青筋に中らぬようにすべし、針三分留ること三呼。
肩背いたみ、中風、小便数く嚏て楽ず、寒熱、風痺、臑肘攣つり、こうひ、上気、嘔吐、口舌かわき、欬嗽、おこり、手足はり、にわかに腫れ、心痛、心煩、労熱、上気、腰背強ばり痛み、肺の積、小児慢きょうふうを治す。

魚際

二穴。手大指本節の後へ内側、うでの横文の中、寸口の脉の上際なり。針一分留ること三呼、禁灸。
酒病、悪寒、虚熱、舌胎黄、づつう、欬嗽、胸腹いたみ、目眩、不食、肘攣り、咽乾、尻いたみ、溺血、嘔血、心痛、乳癰を治す。

図1

孔最

二穴。尺沢を目的に魚際より七寸。針三分灸五壮。
熱病、汗出でず欬逆、肘痛、手握られず、吐血、咽腫、声出でざるを治す。

列缺

二穴。腕の側上ヘ一寸五分、然れども針を以っては知りがたし。左をとるには、病人の右の食指を左の大指と食指との間に組入て、右の食指の頭のあたる処を穴とす。右を取も此のごとし、針二三分留ること三呼、瀉は五吸。灸三壮七壮四十九壮にいたる。
中風、口噤み、口眼ゆがみ、手肘力なく、半身かなわず、寒熱、おこり、咳嗽、唇ゆるまり、健忘、溺に血まじり、精もれ、陰痛み、小便熱し驚癇、癰腫、肩痺、胸脇冷、尸厥、手足腫るを。

太淵

二穴。掌の後へ陥中、魚際と寸口との間。灸三壮、針一、二分留ること三呼。
胸痺、逆気、嘔吐、咳嗽、不寝、目痛み青く、或は白翳、赤筋を生じ、転筋、乍寒乍熱し、掌中熱し、缼盆の中と胸肩背臂いたみ、寒喘、咳血、吐血、振寒、咽乾、狂言、溺の色変り遺失度なきを治す。

少商

二穴。手大指の内側(小指の方は外大指のほうは内)爪の生ぎわを一分ほど去る。針一分留ること三呼、瀉は五吸、禁灸。
頷腫、喉閉、心の下満ち、汗出で寒く、痎瘧、欬逆、腹脹不食、指いたみ、掌熱し、小児の乳鵝を治す。

商陽

二穴。手食指の内(大指の方)側ら爪甲の角を一分ほど去る。針一分留ること一呼、灸三壮。
胸中に気みち、喘欬、おこり、熱病汗出でず、耳鳴、きこえず、頷はれ、歯いたみ、肩背缼盆いたみ、目青く、くらむに灸三壮、目左ならば右にすべし。

二間

二穴。手の食指の本節の前(爪の方)内側ら、拳をにぎれば食指の内側、本節の前に折目出づるなり、めの頭ら陥の中也。針三分留ること六呼、灸三壮。
喉痺、頷腫、肩背腕いたみ、歯痛み、目黄み、はなじ、口ゆがみ、不食、傷寒の水結を治す。

三間

二穴。手食指の本節の後側、拳をにぎりて食指の内側ら本節の後にいづるおりめのかしら陥の中。針三分留ること三呼、灸三壮。
こうひ、下歯を虫喰いたみ、胸腹つかえ、腸鳴、泄瀉、かんねつ、おこり、唇焦れ、口乾き目眥いたみ、舌を吐し、気喘、不食、傷寒、気熱、身冷、結胸を。

合谷

二穴。手大指と食指との岐骨の間だ陥中推せば肘にこたえる処。灸三壮、針三分留ること六呼。
傷寒大に渇き、発熱悪寒づつう、背強り、汗なく寒熱、瘧り、はなぢ、目くらく、虫歯、耳聾、喉痺、面はれ、言うこと能わず、口噤み、中風、かざぼろせ、痂疥、偏正のづつう、腰背いたみ、小児乳鵝を治す。

陽谿

二穴。腕中の上側両筋の間陥の中、直に合谷の通りの腕くび屈伸する節なり。
狂言して笑い、瘧疾、づつう、胸満息ならず、寒咳、こうひ、耳鳴り、きこえず、肘痛、痂疥を。

偏歴

二穴。陽谿の上(ひぢの方)三寸にあり、此より以下の穴は、陽谿と曲池とを目的にしてとる。針三分留ること七呼、灸三壮。
肩肘腕しびれ痛み、衂血、瘧、てんかん、こうひ、耳なり、小便しげきを治す。

温溜

二穴。直に偏歴の上二寸、腕のうしろ五寸。針三分、灸三壮。
上気、めまい、てんかん、風逆、手足はれ、肘痛、こうひ、口舌痛、はなぢを。

下廉

二穴。偏歴のとおり曲池の下四寸。針五分留ること二呼、灸三壮。
泄瀉、労瘵。小腹つかえ、大小便に血まじり、中風、熱風、冷え、しびれ、顔色あしく、けんへき、腹脇いたみ、食こなれず、乳癰を治す。

上廉

二穴。曲池の下三寸。針五分、灸五壮。
小便しぶり黄赤く、胸いたみ、中風半身かなわず、骨髄ひへ、手足しびれ、喘息、脳風、づつうを治す。

手三里

二穴。曲池の下二寸推せば、指の四方の肉高く起る処。針二分、灸三壮。
中風口ゆがみ手足かなわず、霍乱、遺失、音出です、歯疼み、頬頷腫、るいれき、肘臂いたむを治す。

曲池

二穴。肘をかがめ手先を胸にあてて、肘の横文の上方のはづれ、曲る骨の間だ。針七分気を得て瀉し、後にこれを補す、或は五分留ること七呼灸三壮、又日に七壮づつ二百壮にいたる、且停ること十余日して又七壮。
中風半身かなわず、手肘いたみ、風ぼろせ、こうい、胸いきれ、肘痩力なく、傷寒の余熱、てんかん、身痛かゆく、虫のさすごとく痂疥、婦人経脉つうぜざるを治す。

五里 (手五里)

二穴。曲池の上三寸、大筋の真中にあり、肩髃(肩の部にみえたり)を目的にとる。禁針、灸十壮。
驚風、吐血、肘いたみ、上気、心満、身黄み、るいれきをつかさどる。

臂臑

二穴。直に曲池の上七寸、肩髃を目的にとる、筋骨の間くぼみの中。灸日に七壮二百壮に至る、針はよろしからず、若し針せば三分より深くすべからず。
肘ほそく力なく肘痛み、るいれき、頚項攣るを治す。

少海

二穴。肘をかがめて横文の下はづれ小指のとおり也、横文の上の尖は曲池、下の尖は少海なり。針二三分留ること三呼、瀉は五吸、禁灸。
歯疼み、目まひ、発狂、嘔吐、項こわり、肘攣り脇下いたみ、手足あがらず、脳風、づつう、心痛、呃逆、るいれきを治す。

青霊

二穴。直に少海の上二三寸、肘を伸べ挙げてとる。禁針、灸三壮七壮。
目黄み、づつう、肩肘いたみてかなはざるを治す。

少府

二穴。掌の内小指と無名指とをかがめて両指の頭のあたる間なり。針二分、灸三壮七壮。
心煩、少気人を畏れ、手中熱し、肘しびれ、脇攣り、胸いたみ、久瘧、陰かゆくいたみ、小便通ぜざるを治す。

図2

神門

二穴。小指の後の通り腕の横文の中にあり、則ち掌の後の尖骨の下、手の外課の上、両骨の間、拳を握り力めば陥処なり。針三分留ること七呼、灸七壮。
瘧り、心煩れ、水を好み、不食、心痛、手肘ひへ、掌熱し、目黄み、脇いたみ、嘔血、吐血、上気音出でず、健忘、心積、てんかんを治す。

前谷

二穴。手小指の外側、小ゆびの本節のまえにあり、拳を握れば小指の本節の前後に折目出づる、前のおりめは前谷、後の折目は後谿なり。針一分留ること三呼、灸一壮三壮。
熱病、汗出でず、瘧り、てんかん、耳鳴、こうひ、頚項頬はれ、鼻塞、咳嗽、吐血、肘いたみ、産後乳なきを治す。

後谿

二穴。前谷の後にあり。針一分留ること三呼、灸一壮、治証も前谷に同じ。

陽谷

二穴。手外の側ら小指の後外踝の下、腕の文の中。灸三壮、針二分留こと二三呼。
目眩、てんかん、脇いたみ、頚頷腫、耳きこえず、虫牙、小児木舌、乳を呑まざるを。

曲沢

二穴。肘の内の横文の中にあり、曲池へは遠く少海へちかし、動脉の処也。灸三壮、針三分留ること七呼。
心痛、身熱し、煩れ、かわき、嘔血、かさぼろせ、肘腕揺、傷寒、逆気、嘔吐し、頭を揺すを治す。

大陵

二穴。掌の後へ腕の横文の中両筋の間にあり。灸三壮、針五分六分留ること七呼。
熱病汗出でず掌熱し、肘攣り痛み、脇腫、心煩れ、心痛、目赤く、小便赤、嘔啘、こうひ、口乾き、身熱し、づつう、気みぢかく、胸脇いたみ、疥癬を治す、心包絡の実はこれを瀉すべし。

中衝

二穴。手中指の内側、爪の生際を去ること一分陥の中。針一分留ること三呼、灸一壮。
熱病、いきれもだえ、汗出でず、掌の中熱し、身火の如く、心痛、舌強るを治す、心包絡の虚はこれを補す。

液門

二穴。手小指と無名指との間、無名指の本節の前にあり、拳を握りてとる。針二分留ること二呼、灸三壮。
瘧り、むなさわぎ、咽腫、手肘いたみ、頭つう、目赤く渋り、耳きこえず、齦いたむを治す。

中渚

二穴。手小指と無名指との間、無名指の本節の後へ陥みの中、すなわち液門のしりヘ一寸ほどにあり。灸二三壮、針二分留ること三呼。
熱病汗出でず、目まひ、頭つう、咽はれ、耳きこえず、目膜を生し、久瘧、肘手指いたみ、屈伸ならざるを治す、三焦の虚これを補すべし。

陽池

二穴。小指と無名指との間を筋骨にしたがい推し上せば、腕にて指の止る処、腕の中にあり。針二分留ること六呼、禁灸。
消渇、口乾き、おこり、肩ひぢいたみ折傷を治す。

支溝

二穴。直に陽池の上三寸両骨の間、陥みの中。灸三壮五壮十四壮、針二分三分留ること七呼。
熱病汗出ず、かたひぢ痺れおもく、脇いたみ、手足挙らず、霍乱、嘔吐、口噤んで開かず、心悶へ、心痛、傷寒、疥癬、妊婦脉通ぜず、産後血暈を治す。

天井

二穴。肘しりの尖骨の后一寸、両筋の間、肘のつがひ陥みの中。針三分あるいは一寸留ること七呼、灸三壮五壮。
心痛、咳嗽、上気、唾に膿血まじり、不食、寒熱臥すことならず、驚悸、てんかん、中風、耳きこえず、喉痺、目じり痛み、頬はれ、耳後、肘いたみ、うちみ、腰臗、項頚いたみ、大風痛む処を知らず、心わるく、脚気を治す。

臑会

二穴。肩の前の廉、肩の頭を下ること三寸、天井を目的にとる。灸五壮七壮、針五分七分留ること三呼。
肘痛しびれ、力なく癭瘤をつかさとる。


底本:『鍼灸重宝記綱目』(京都大学附属図書館所蔵)
図は画像データより抽出し一部加工

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