経絡要穴②・心腹の部/『鍼灸重宝記』本郷正豊著(11)

心腹の部

天突

一穴。頚の結喉の下四寸、宛宛たる中。灸三壮五壮、針一分五分、留ること三呼、気を得て瀉す。若し針を直に下し手を低るときは、五臓の気傷れて短命なり。
面熱し、上気欬逆、気暴に喘し、咽腫、咽冷、声破、喉中瘡を生じ、膿血を咯き、瘖して言うこと能ず、寒熱、頚腫、哮喘、喉中鳴、胸中魚鯁の立ちたるごとく、舌の下急に、心と背と相引いて痛、膈噎、嘔吐を。

璇璣

一穴。天突の下一寸。灸五壮、針三分。
胸の骨痛み、煩れ、喉痺、咽腫るを主どる。

膻中

一穴。 両乳の間、膈の真中。灸七壮五十壮、禁針。
中気、上気、短気、咳逆、噎膈、嘔吐、不食、喘促、咳嗽、胸塞がり、心胸いたみ、肺癰、唾膿、乳汁少きを治す。

巨闕

一穴。肋骨の真中のはづれ、蔽骨より二寸下。針六分留ること七呼、気を得て即ち瀉す、灸七壮より七七壮まで。
上気、咳逆、胸つかへ短気、背いたみ、心痛み、痰飲、霍乱、吐逆、驚悸怔忡、腹張、暴にいたみ、心恍、不食、傷寒、心煩、嘔逆、発狂、黄疽、狐疝、小腹張、尸厥、妊婦子心へ衝いて昏悶するを主る。

上脘

一穴。巨けつの下一寸、臍の上五寸。針八分。先づ補し後に瀉す。風癇、熱病は先づ瀉し、後に補して即愈。灸日に十四壮より百壮にいたる、未だ愈えずはこれを倍すべし。
腹鳴り痛み食化せず、霍乱、吐利、腹いたみ、身熱し、汗出でず、翻胃、嘔吐、不食、腹張り、気満、心忪れ、驚悸、嘔血、痰涎多く、虫積、黄疽、虚労、吐血をつかさどる。

中脘

一穴。上脘の下一寸、臍の上四寸。針一寸二分あるひは八分、留ること七呼。瀉五吸。はやく針を出す。灸日に十四壮より三四百壮まで。
膈噎、翻胃、不食、喘息、腹脹、中悪、心腹いたみ、痢病、疝気、積聚、傷寒、疫病、温瘧、先づ腹いたみ先づ瀉し、霍乱、洩出を知らず、身冷、俛き仰きしがたきを。

建里

一穴。中脘の下一寸、臍の上三寸。灸五壮、針一寸二分あるひは五分留ること十呼。
腹脹、身腫、心痛、不食を治す。

下脘

一穴。建里の下一寸、臍の上二寸。
臍下より動気上り、腹堅く、胃脹、腹いたみ、六腑の気寒し、穀転化ず、羸痩、小便赤く、翻胃、不食を治す。

水分

一穴。下脘の下一寸、臍の上一寸。針五分、留ること三呼。水腫に刺せば水つきて即死す。水病には灸四十九壮より四百壮にいたる、大によし。
水腫、脹満、小便通せず、転筋、不食、臍腹いたみ、心に冲き、腰背こはり、腸鳴り、鼻衂、小児顖陥るを。

神闕

一穴。臍の真中なり。禁針也、もし刺せば臍の中悪しき瘍を生じて死す。灸も軽き病には猥にすべからず。急症重き病には塩か味噌を布きてすべし。
中風卒倒し甦らず、久しく冷えて泄痢止まず、水腫、鼓脹、腸鳴り、臍腹いたみ、小児驚風、てんかん、反張、脱肛を治す。卒中風甦らざるに灸百壮すれば甦る、それにても甦ずは又百壮すべし。

陰交

一穴。臍の下一寸。針八分。気を得て即瀉す、瀉して後に補ふべし。灸廿一壮より百まで。娠婦には忌。
心腹いたみ陰中に引て小便通ぜず、疝気、陰汗湿かゆく、腰膝つりいたみ、臍下熱し、鼻血、婦人の崩漏、月水たへず、帯下、産ご悪露止まず、臍の繞り冷痛み、陰痒く、積塊、小児の陥顖を治す。此穴に灸針すれば一生子を孕まず。

気海

一穴。臍下の一寸半。灸七壮、針八分。気を得て瀉し、瀉して後に補ふべし。
傷寒、湯水を多く飲て腹脹、気喘ぎ、心の下痛み、冷病、面赤く、真気不足し、一切の気病久しく差ず、痩羸、四支力弱く、積聚、せんき、血塊、臍の下冷気いたみ、心痛、中悪、泄痢、大小便通せず、崩漏、帯下、月水調はず、産後悪露止まず、臍腹痛み、閃著腰いたみ、小児の遺尿を治す。

石門

一の名は丹田。臍の下二寸。灸七壮より二百壮まで、針五六分留ること七呼、あるひは八分留ること三呼、気を得て即ち瀉す。婦人此穴に針灸すれば一生懐妊せず。
傷寒、小便赤く通ぜず、泄瀉止まず、血淋、吐血、積塊、せんき、腹いたみ、不食、水腫、血塊、崩血を治す。
 

関元

一穴。臍の下三寸。灸七壮より三百壮まで、針一寸二分留ること七呼、或は八分留ること三呼、瀉五吸、妊婦は禁針。
精冷虚く乏しく、臍中紋いたみ、寒気腹に入りていたみ、疝気、労熱、積聚、風眩、づつう、洩利、小便通せず、淋病、失精、白濁溺血、下血、崩漏、月水通ぜず、帯下を治す。

中極

一穴。臍の下四寸。灸五壮より百壮まで、針六分留ること十呼、気を得て即ち瀉す。
積塊心に上り、疝気陰寒、陽気虚憊、水腫、小便頻数、遺精、さんご悪露行らず胎衣下らず、月経調わず、子門腫れいたみ、淋病、恍惚、尸厥、飢えても食すること能はず、子なき婦には四度針すれば子あり、又孕婦にはいむ。

曲骨

一穴。臍の下五寸、横骨の上、毛際の陥中。灸七壮より四十九壮まで、針二寸一寸あるひは六分、留ること七呼。
五臓虚弱、冷極て小腹張れ痛み、小便通ぜず、淋瀝、遺精、赤白帯下を治す。

雲門

二穴。結喉の下五寸、左右へ六寸づつ陥中。針三分、灸五壮。
傷寒、手足熱し、気のぼり心胸をつき、脇より背にとをりて痛み、肘をあぐること能わず、喉痺、しゃくり、短気、癭気を治す。

中府

二穴。雲門の下一寸。灸五壮、針三分。
腹脹、手足はれ、食下らず、喘気、胸痞、肩背いたみ、嘔啘、欬逆、上気、肺系ひきつり、肺の寒熱、胸ふるひ、膽熱し、欬唾、濁涕、風汗出、面は浮れ、少気して、臥すことならず、傷寒、胸中熱し、遁死をつかさどる。

気舎

二穴。天突(結喉の下四寸)の左右へ各一寸五分づつ。灸五壮、針三分。
上気、肩腫れて顧ること能わず、こうひ、咽腫、飲食下らず、しゃくり、癭瘤をつかさどる。

缺盆

二穴。天突の左右へ各四寸、肩の下横骨の上廉、くぼみの中。灸三壮、針二分、留ること七呼。ふかく刺べからず。
水腫、積聚、瘰癧、喘急、こうひ、汗出、寒熱、缺盆の中腫れ、胸みち、傷寒、胸の中熱するを治す。

幽門

二穴。臍の上六寸、巨闕の左右へ各五分(一に曰く一寸五分づつ)づつひらく。針一寸、灸五壮。
小腹脹満、涎沫を嘔吐し、いきれもだへ、胸みちいたみ、不食、欬逆、健忘、膿血をくだし、目赤くいたむを治す。

通谷

二穴。幽門の下一寸、上脘の左右へ五分づつ。針五分、灸三五壮。
口喎み不言、心恍、目赤くいたみ、痰飲、嘔吐、しやくじゅを治す。

陰都

二穴。通谷の下一寸。針三分、灸三壮。
心満、逆気、腹鳴、肺脹、目赤くいたむを治す。

石関

二穴。ゐんとの下一寸。針一寸、灸三壮。
嘔吐、しゃくり、腹いたみ、気淋、大小便通ぜず、心下堅満、脊強り、目赤く、女の血塊を治す。

不容

二穴。幽門の傍ら相去ること一寸五分。灸三壮五壮、針五分八分。
腹みち、痃へき、唾血、肩脇いたみ、心背いたみ、欬すれば肩に引て痛み、嗽喘、疝瘕、不食、腹鳴、嘔吐を。

承満

二穴。ふようの下一寸、上脘の両傍へ各二寸(一に曰三寸)。針三分、灸三壮五壮。
腸鳴、腹はり、上気喘逆、飲食下らず、肩息、唾血を。

梁門

二穴。承満の下一寸。針二分、灸五壮。
脇下積気、不食、滑泄完穀化せざるを治す。

関門

二穴。粱門の下一寸。針八分、灸五壮。
喘満、積気、腸鳴いたみ、泄利不食、腹中気はしり、臍を夾てひきつり痛み、身腫、痰瘧、振寒し、遺溺するを治す。

太乙

二穴。関門の下一寸。灸五壮、針八分。
心煩、てんかん、狂乱、舌を出すを治す。

滑肉門

二穴。太乙の下一寸。灸五壮、針八分。癲狂、嘔逆、吐血、重舌、舌こわきを治す。

天枢

二穴。臍の左右へ二寸づつ。灸五壮より百壮まで、『千金方』に曰く針すべからず。
泄瀉、痢病、不食、水腫、腹張、腸鳴、上気胸に冲き、久積、冷気、臍腹痛、嘔吐、霍乱、瘧り、傷寒、水を飲みて腹はり、女の血塊、漏下、帯下、月水調わざるを主る。

気衝

二穴。両股の付根動脉ある所也。俗に云、いのもも処ぐりぐりする円き小骨の一寸上にあり。禁針、灸三壮、七壮。腹みち、疝気、陰丸はれ、小腹腰いたみ、婦人子なく、胎衣下らざるを治す。

期門

二穴。不容の傍ら一寸五分、又曰、乳より直に一寸半下。針四分、灸五壮。
胸中煩熱、賁豚上下、目青くして嘔し、霍乱、洩利、腹かたく大にして喘き、臥すこと能わず、脇下積気、傷寒の心痛、嘔酸、不食、食後に水を吐き、胸脇支満、血塊、口かはき、消渇、さんごの餘病、尸厥、傷寒の腹みち、譫語、寸脉微にして緊なるもの、又発熱悪寒し、大に渇き、腹満、自汗、小便利する者、又五六日譫語止ざる者、婦人傷かん、発熱、悪寒、経水たまたま来り、七八日熱除て脉遅、身涼しく、胸脇満、譫語するは、熱、血室に入る。みな期門に刺して愈ゆ。

腹哀

二穴。期門の下二寸、腹の中行を去ること四寸半。針三分、禁灸。中寒、食化せず、大便に膿血をくだすをつかさどる。

腹結

二穴。腹哀の下四寸八分。針七分、灸五壮。
欬逆、腹冷、臍いたみ、泄瀉、心痛を治。

章門

二穴。臍の上二寸、両旁へ九寸づつ。側臥て、うへの足をかがめ下の足をのべて、肘の尖のあたる処の肋の端。針六分八分留ること六呼、灸百壮五百壮まで。
腹鳴、食化せず、胸脇いたみ、臥すことを得ず、煩熱、口乾き、不食、喘息、心痛、食傷、嘔吐、腰脊冷えいたみ、白濁、寒疝、しゃくじゅ、腹腫れ、脊強り、肩臂挙らず、四支懈惰、身黄に痩せ、善くおそれ、少気、厥逆を治す。

京門

二穴。直に章門の後十一枚めの肋骨の先、すこしへこみある陥み、俗に後章門といふ処なり。灸三壮、針三分、留ること七呼。
腸鳴り、小腹いたみ、肩いたむを治す。


底本:『鍼灸重宝記綱目』(京都大学附属図書館所蔵)
図は画像データより抽出し一部加工

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