経絡要穴①・顔面の部/『鍼灸重宝記』本郷正豊著(10)

経絡要穴

頭面の部

神庭

一穴。額の真中、前の髪際より五分上にあり。灸二三壮あるいは二七壮。
狂乱、てんかん、驚風、天吊、角弓反張、舌を吐し、人事をしらず、眩暈、づつう、寒熱、濁涕止ず、目涙出 驚悸怔仲、不寝、嘔吐、喘渇するを治す。禁針の穴なり。

上星

一穴、一の名は神堂。神庭の後五分、髪際に入ること一寸陥中。針三四分留ること六呼、灸五壮。
頭痛、面赤く腫、皮はれ、鼻中に息肉いで鼻ふさがり、痎瘧、汗不出、めまひ、目じりいたみて、遠くみることあたはず、吐血、はなぢを治す。

顖会

一穴。上星の後ヘ一寸、髪際より二寸上。灸二三壮あるひは二七壮、針は禁穴なり。
脳虚冷あるひは酒食をすごし脳痛て破がごとく、風頭眩、顔あをく、衂血、面あかく、にはかに腫れ、頭皮はれて白屑を生じ、鼻塞いて香臭を聞ず、驚悸、目載上し、昏みて人を知らざるを治す。

前頂

一穴。顖会の後ヘ一寸半、前の髪の際より三寸半上、骨の間陥の中。灸三壮二七壮、針一分あるひは四分。
頭風、面赤くはれ、水腫、てんかん、眩暈、きやうふう、瘈瘲、はれいたむことをつかさどる。

百会

一穴、一名三陽五会、一名顚上、一名天満。前頂の後ヘ一寸五分、前の髪のはへぎはより五寸上、旋毛の中にあり、両の耳の尖の直、頭の直中なり。針二分又は四分、灸七壮あるひは三五壮。
頭風、中風、言語謇渋、口噤み、半身かなはず、心煩れ悶へ、驚悸、健忘、痎瘧、脱肛、風癇、角弓反張、羊鳴、多く哭て語言択はず、発るときは死入り、沫を吐き、汗出、乾嘔し、酒を飲みて面赤く、脳重く、鼻ふさがり、頭つう、目まひ、食に味なきを主る。百病を治す。

後頂

一穴、一の名は交衝。百会の後ヘ一寸五分、前の髪際より六寸半。灸五壮、針二分三分四分。
頂強り、額上痛み、悪風寒く、風眩、目䀮、歴節して汗出、狂走、不寝、癇発、瘈瘲、偏頭痛を主どる。

強間

一穴、一の名は大羽。後頂の後ヘ一寸半。灸七壮五壮、針二分。
頭痛、めまひ、脳のめぐり痛み、心煩れ、嘔吐、項こはり、臥すことを得ざるをつかさどる。

風府

一穴、一名舌本。強間の後二寸五分、後の髪際より一寸。針三四分留ること三呼、禁灸なり。
中風、舌緩まり語らず、振寒汗出て、身重くして悪寒、づつう、項強て回顧することを得ず、偏風半身かなはず、はなぢ、咽喉はれ痛み、傷寒、狂走、目妄に視るを治す。頭の百病、黄疽を主る。傷寒、づつう、悪風、発熱、身疼む者、或は耳聾、脇痛、嘔して口苦く、頭痛、寒熱往来する者、並に風池、風府に刺べし。

瘂門

一穴、一名は舌厭、一名は舌横、一名は瘖門。風府の後五分にあり、針四分二分、留ること三呼して潟し、五吸にして瀉し盡す、更に針を留めてこれを取る、灸は禁穴なり。
舌急にして語らず、重舌、もろもろの陽熱気盛にして鼻衂止ざるを治す。

頭の中行・二行・三行・図

曲差

二穴。神庭の旁ら左右ヘ一寸半づつ、前の髪際より五分上にあり。針三分、灸三壮。
目明ならず、鼻衂、鼻瘡、心煩、頭頂いたみ、頂き腫るを治す。

五処

二穴。曲差より後へ五分。灸三五壮、針三分、留ること七呼。
背こはばり反張、てんかん、頭風、めまひをつかさどる。

承光

二穴。曲差の後へ二寸。針灸共に忌。

通天

二穴。曲差より後へ三寸半、百会の左右ヘ一寸半づつひらく。灸三壮、針三分、とどむること七呼。
癭瘤、はなぢ、清涕を出し、頭ふらつき、項いたむを主る。

絡却

二穴。曲差の後へ五寸。針三分、留ること五呼、灸三壮。
頭ふらつき、耳なり、腹はり、目の内障を生ずるを主る。

玉枕

二穴。曲差の後へ八寸半、頭の中行より左右ヘ一寸五分づつ開きて。灸三壮、針は禁穴なり。
目眩、目いたみ、頭項いたみ、鼻塞り香臭を聞かざるを治す。

天柱

二穴。項の後の髪際の中行より左右へ一寸三分づつ開きて、大筋の外廉陥の中。針二分五分、留ること三呼して、瀉すこと五吸。
頭風、鼻香臭を聞かず、頭ら旋き、脳痛重く、頂いたみ、項強るを主る。

臨泣 (頭臨泣)

二穴。目の真中の行の上、髪際より五分上、すなはち神庭の左右へ二寸二分半づつ開く。針二分、留ること五呼、禁灸。
目眩き、目痛み、白翳を生じ、悪寒、鼻塞、驚風、てんかん、反視、卒中風、月水通ぜぬに。

目窓

二穴。臨泣の後ヘ一寸。針三分、灸五壮。
一切の眼病、頭面浮腫、づつう、寒熱に。

正営

二穴。目窓の後ヘ一寸、針三分灸五壮。
目眩、頭項かたく痛み、歯齦痛に。

承霊

一穴。正営の後ヘ一寸半。灸五壮、禁針。
頭いたみ、悪寒、悪風、喘息を主る。

脳空

二穴。承霊の後ヘ一寸五分。灸三壮針四五分。気を得て瀉す。
労瘵羸れ痩、身熱し、項強り、頭重く痛、目眩くを。

風池

二穴。脳空の後への耳の下面の通り、項の竪の髪際の陥の中、すなはち推せば耳の中へ応る処。針三四分あるひは七分、留ること三呼、灸七壮。傷寒々ねつ、温病、汗出でず、目眩き、あるひは偏正の頭痛、痎瘧、頚項ぬくがごとく痛むを主る。

天牖

二穴。風池の後へ項の竪の髪のはへぎわ、瘂門の両傍。針灸ともに禁。

頭三行頭側耳上側

本神

二穴。神庭の左右へ各三寸づつ、前の髪際より五分上。針三分、灸七壮。
驚風、てんかん、涎沫を吐き、頭項強ばりいたみ、目眩をつかさどる。

頭維

二穴。額の角の髪際より入こと四分、神庭の左右へ各四寸五分、針五分三分、禁灸。
頭痛目脱くがごとくいたみ、目風物を見ること明らかならざるを治す。

頷厭

二穴。額の角よりすこし下、竪の髪際、頭維の穴より少し下の前め、灸三社、針七分、留ること七呼。深く刺すときは耳聾ず。
頭かたく痛み、目まひ、驚風、てんかん、手腕いたみ、耳鳴、目不明を。

懸顱

二穴。額の大角の下、頷厭の下、肉少し高く凸なる処。灸三壮、針二三分、とどむること三呼、あるひは七分留ること七呼。深く刺せば耳聾ず。
頭痛、牙歯いたみ、面赤くはれ、熱病、煩れ悶へ、濁涕出るを。

懸釐

二穴。けんろの少し下、米咬の下つらに骨のわれめある処。灸三壮、針三分、留ること七呼。
面赤く腫、側頭痛み、煩心、食を欲ず、熱病、汗出でず、目眥赤くいたむをつかさどる。

曲鬢

二穴。耳の上の少し前、曲隅の中。針三分、灸三壮あるひは七壮。
頷腫痛、口噤め言こと能ず、頭項かへりみることを得ず、脳の両角痛んで目に引くを治す。

率谷

二穴。耳の上、髪際を竪に入ること一寸五分、少し三分ほど前へよせめに点す。針三分、灸三壮。
痰気、膈いたみ、頭脳痛、頭重く、酒風、皮膚腫、胃寒え、煩悶、嘔吐を。

天衝

二穴。耳の後の通り、はつさいを竪に入ること二寸上、すこし三分ほど前へよせめに点す。灸三壮七壮、針三分。
癲疾、善く驚き恐れ、頭痛、牙齦腫れいたむをつかさどる。

浮白

二穴。直に天衝の下一寸、耳後の髪際を入ること一寸。針三分、灸三壮七壮。
足行こと能ず、耳聾、耳鳴、歯痛み、胸満ちて息することを得ず、胸いたみ、頚項癭、癰腫言うこと能わず、肩臂挙らず、寒熱を発し、喉痺、しゃくり、痰沫を吐くを治す。

竅陰 (頭竅陰)

二穴、一名枕骨。耳の後に完骨とて細長き骨あり、其上の陥み、耳の後手にて推し動かせば空ある中。灸五壮か三壮、針三四分。
四支転筋、目いたみ、頭項頷いたみ、耳鳴、舌本より血を出し、骨労、癰疽、発厲、手足煩熱、汗出でず、舌強り、脇痛み、欬逆、こうひ、口苦きを治す。

完骨

二穴。耳の後の髪際に入ること四分、即ち完骨といふ骨の下つらの陥み。灸七壮、小児は三壮、針二三分。
足痿、頭面腫、頭頚いたみ、歯齲、口眼喎斜を治す。

素髎

一穴。鼻柱の尖なり。針一分、禁灸。
鼻内の息肉、鼻窒り、はなぢ、喘息を治す。

水溝

一穴、一名人中。鼻柱の下。灸三壮、針三四分、留ること五六呼。気を得て瀉。
消渇、水腫、癲癇、狂乱、中風、中悪、黄疽を治す。

兌端

一穴。上唇の赤き肉と白き肉との際め。針二分、灸三壮。
癲癇、小便黄に舌乾き、消渇、はなぢ、唇強り、歯齦いたみ、鼻ふさがり、痰涎、口噤を主る。

齗交 (齦交)

一穴。唇の内、上歯の齗の縫の中。針三分、灸三壮。鼻中の息肉鼻ふさがり、額頞いたみ、目の内眥赤くして痒くいたむを主る。

承漿

一穴。下唇の赤肉の少し下陥中、口を開て点す。針三分、気を得て即瀉。留ること三呼、徐々に気を得て出す。此穴に灸すること一日に七壮づつ、七日に四十九壮灸するなり。然れども毎日つづけて灸すること勿れ。只一日に七壮灸しては、四五日も間を置いては又七壮灸す、日数を積で四十九壮に至れば、血脉通じ病立どころに愈る。
偏風半身遂はず、口眼喎斜、面はれ、消渇、口歯疳蝕、瘡を生じ、暴に瘖して言うこと能ず、男子の七疝、女子の瘕聚を主る。

廉泉

二穴、一名舌本。結喉の上四寸、推せば舌の根へ応る処、仰いて点す。灸三壮、針二三分、留ること七呼、気を得て瀉す。
咳嗽、上気、喘息、舌下腫、口瘡を治す。

攅竹

二穴。両眉の頭すこし毛の中へ入陥の中。禁灸、針一分。
目くらく涙出、眼赤いたみ、瞳かゆく、臉瞤動し、頬いたみ、尸厥、風眩、てんかん、狂乱、鬼魅をつかさどる。

睛明

二穴。目の内眥一分ほど外、目と鼻との間陥み。針一分、禁灸。
目遠く見ること能わず、悪風、涙出、弩肉、省目を治す。

陽白

二穴。瞳子の通り、眉毛の上毛際より一寸上。針二三分、灸三壮。
瞳子痒く痛み、上視、目眵こみ、眼昏きをつかさどる。

聴宮

二穴。耳の前に円くひらつく尖あり、是を珠子といふ、其前に小豆を容る程の陥みある所。針三分、灸三壮。
癲かん、心腹つかへ、音不出、聤耳、耳鳴、耳塞を治す。

頬車

二穴。耳の下、曲頷の骨の端、すこし前に口を開ば陥みあり、口を閉ば骨蓋ふ処。針三四分、灸三壮。
中風、牙をくひつめ口噤んで言わず、牙痛、頷頬腫、口眼喎斜を。

耳門

二穴。耳の前、珠子の上、起る肉の鈌たる処、陥の中。針三分、禁灸。
耳鳴、聤耳、耳瘡、歯齲、唇吻ゆがむを治す。

翳風

二穴。耳の尖の後への下角、陥みの中を推せば耳の中へ応へいたむ処。灸三壮より七壮にいたる、針三分七分。
耳聾、耳鳴、口眼ゆがみ、頬はるるを治す。

頭面耳廻の穴図

地倉

二穴。両の口吻の傍ら、唇の赤肉より四分ほど去て動脉のある処。針三分半、留ること五呼、気を得て即ち瀉す、灸十四壮、病重きは四十九壮。艾を小さくすべし、大なれば反って口ゆがむ、若し喎まば承漿に灸四十九壮すればなをるなり。
中風、半身かなはず、口歪み、目閉昏み、音出でず、飲食収らざるをつかさどる。

聴会

二穴。耳の前、珠子の下少し前陥の中、口を開きて陥む処。針三分或は七分、留ること三呼、気を得て即ち瀉す、灸三壮、又毎日五壮づつ四日の間灸して十日ほど間を置いて又五壮灸す。
耳鳴、耳聾、牙車おとがい脱け離れ、歯いたみ、中風、口歪み、手足かなはざるをつかさどる。

大迎

二穴。耳の下、曲りたる頷の角より一寸三分前に動脉ある骨のわれめ、口を動かせばあごくつがひめ也。灸三壮、針三分、留ること七呼。
口噤め開かず、頬腫、牙車おとがい疼むを治す。


底本:『鍼灸重宝記綱目』(京都大学附属図書館所蔵)
図は画像データより抽出し一部加工

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