『鍼灸重宝記』本郷正豊著(7)

十二経旺分の時

寅の時は肺の気至る、卯の時は大腸の気至る、辰の時は胃の気いたる、已の時は脾の気いたる、午の時は心の気いたる、未の時は小腸、さるの時は膀胱、とりの時は腎、いぬの時は心包絡、亥の時は三焦、ねの時は胆、うしの時は肝の気いたる。此の旺分の時を考えて、それぞれに灸すれば其験あり。

四季の人神

春は左脇、夏は臍、秋は右の脇、冬は腰。

毎日の人神

一日足の大指、二日外踝、三日股の内、四日腰、五日口、六日手、七日内踝、八日足腕、九日尻、十日腰背、十一日鼻柱、十二日髪際、十三日牙歯、十四日胃脘、十五日遍身、十六日胸、十七日気衝、十八日股、十九日足、二十日内くるぶし、廿一日手小指、廿二日外くるぶし、廿三日肝兪と足と、廿四日手陽明のけいのけつ、廿五日足陽明のけいのけつ、廿六日むね、廿七日ひざ、廿八日陰、廿九日ひざ脛、卅日足の趺。

十二時人神

卯おもて 辰いただき 巳手 午むね 未はら 申心 酉せなか 戌こし 亥もも 子あし 丑かしら 寅みみ

血忌日

正うし 二ひつじ 三とら 四さる 五う 六とり 七たつ 八いぬ 九み 十い 十一うま 十二ね

血支日

正うし 二とら 三う 四たつ 五み 六うま 七ひつじ 八さる 九とり 十いぬ 十一い 十二ね

長病日 この日針灸ならびにはじめてくすりをもちゆることをいむ

六日 十五日 十八日 廿三日 廿四日 廿八日 廿九日

艾葉の製法

三月三日、五月五日に採るもの神霊あり、ふるく久しきはいよいよよし、紙にて巻き長さ二分ばかりに切るべし、おおきさは切口二分ばかり、人々の気力に応じて大小を量るべし。小さければ兪穴にはづるることあり、小児には小麦ほどにすべし、虚人にはやわらかにひねるべし。

灸火の法

鉄石にて打て火を出し、麻油ごまのあぶらに燈芯を入れ、ともして用ゆべし。天の火はいよいよよし、諸木の火、魚の油はわろし、箸は桃の枝よし、竹もくるしからず、灸し終るときは口にて塩をかみて其灸穴に付けて又二三壮灸して置くべし。

尺寸を定る法

男は左、女は右の手の中指の第二の節上の折目と、下の折目との間を其の人々の一寸とさだむるなり。折目に内外あり、食指の方へ向たる折目を取るべし。中指を屈めて取る、かがむるに環のごとくすべし。
中指を屈むる図

髪際をさだむる法

髪際の分明なるは子細なし。若し髪抜けてしれざるは、両の眉の正中より三寸上を前の髪際とす。背の大椎より三寸上を、うしろの髪際とさだむるなり。

大椎をさだむる法

大椎より上に小椎一つも二つもあり、又一つもなきもあり。大の字に心を付けて取るべし。又秘伝に病人をうなづかしむるに、小椎は頚に付て下る、大椎は脊骨に付て動かず。又肩と同じ通りなるが大椎とも云。

灸補瀉の法

やまひ実する者はこれを瀉し、正気虚する者はこれを補う。瀉には艾炷を吹き、或は扇にてあふぎ滅す。補には艾炷を吹かずして、火のおのづから滅次第にするなり。

灸するとき眩暈を治する法

灸するとき眩暈することあらば、冷き物にて灸の処を圧せばおのづから甦る。良く久しくして稀粥あるいは姜湯を用ゆべし。

灸瘡を発する法

凡そ灸してうぐわざれば其の病愈えず。かるがゆえに灸瘡を発せんと欲せば、古き草履の底をあぶり、あたため火痂ひぶたの上を摩ること十遍ほどすれば三日にしてついゆる。
又葱の茎三五本を煻灰あつばいの中にあたため火痂ひぶたを慰せば三日めにうぐう妙なり。

灸瘡を洗う方

凡そ灸しおわつて、まづ薬湯にて灸瘡のめぐりを温め洗えば、風気を除て経脉を通じ、よくうぐいてやまいを愈す。
葱の赤皮の根、薄荷、各々等分
きざみ煎じて絹に浸しあたため潤す。

火痂落て後あらう方

桃枝 ひがしへさしたるえだ、柳皮 ひがしへさしたるえだのかわ
右、きざみ煎じて、火痂落て後洗い温むれば、風を去り、気血を循し、病を治す。又、灸瘡うぐい、ただれて痛み甚しくは、胡荽こすい、黄蓮おのおの等分煎じてあらうべし。又、血出て止ざるには百草霜なべずみつけてよし。又、うぐいただれて愈がたきには、無名異むみょうい鉄漿おはぐろにときつくべし、又馬の脂を付けてよし。


底本:『鍼灸重宝記綱目』(京都大学附属図書館所蔵)
図は画像データより抽出し一部加工

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