鍼灸重宝記≫針灸諸病の治例⑦

婦人の科

夫れ婦人は十四にして、月水行り、四十九にて絶ゆ。その病、大低男子と異なることなし、惟、胎前、産後、月経調はず。癥瘕、崩漏、帯下の証のみ同じからず、常に血虚し、気鬱しやすし。

▲月水調らざるには気海、三陰交、中極、帯脉、灸一壮より過すべからず。又肩兪効あり。
▲月水多く下るは通里、行間、三陰交。
▲月水来らず、面黄み、嘔吐し、子なきには三陰交、曲池、支溝、三里。
▲経閉は、会陰三壮、月水通ぜずは気衝七壮、あるひは関元。
▲月水通ぜず、あるひは、多く、心下満、目遠くみること能はず、腹いたまば、水泉五壮、灸すべし。
▲崩漏、月水調はず、逆気、腹脹は血海に灸三壮。
▲漏血止ずんば太衝、三陰交。
▲血崩には気海、大敦、陰谷、太衝、三陰交、然谷、中極。
▲赤白帯下は白環、帯脉、関元、三陰交、気海、間使。
▲久き帯下には曲骨、次髎、長強。
▲月水をみる時に、交合し、寒熱さし引、形痩せて、虚労のごとくは腎兪、風門、中極、気海、三陰交。
▲経行の時に傷寒を病ば、期門に針す。
▲臍腹冷、痛み、脇下に引痛は、中庭廿一壮。
▲諸節疼ば陽輔。腨腓の病は崑崙、承山。
▲足緩は陽陵、衝陽、丘墟。
▲脚弱は膝関、委中、三里、陰市。
▲脚筋短急、足重腫痛み、鶴膝、歴節風は、風市。
▲腰重く、脚筋攣りには、両脚䐐を曲め、両紋四処三壮一同に灸す。
▲腰痛は僕参三壮。
▲膝より上のいたみは環跳、風市。
▲膝より下は犢鼻、膝関、三里、陽陵に灸。
▲踝より上は三陰交、絶骨、崑崙に灸。
▲踝より下は照海に灸。
▲腿痛は、真骨康し。
▲脚気は風市に灸し、次に伏兎に針三分(灸すべからず)。犢鼻、膝眼、地五会、三里、上廉、絶骨。
▲一切冷えつかるるには関元に灸すべし。
▲月水調はず、塊となるを癥瘕といふ。関元に灸すべし。
▲血塊には復溜、三里、気海、丹田、復帯、三陰交。
▲小腹堅きは、帯脉。
▲血の道は、目眩、頭つう、発熱、嘔吐して不食す。不容、風府、大椎、大抒。

妊婦 はらみおんな

▲子なきは三丘、中極。又は腎兪、命門。
▲妊婦、頓に仆るることあれば、胎動して安からず。あるひは、胎衝上て、心をせめ、腹いたむには巨闕、三陰交、に針すべし。
▲小産、胎堕して後、手足水のごとく厥冷するに、肩井一針すべし。針刺すことふかければ、悶へくるしむ。急に三里に刺。
▲胎落やすきは、神闘に灸す、永く落ちず。
▲難産、横産、死胎、には合谷を補して、再び瀉すべし。三陰交、太衝。
▲横産にて、子の手を出さば、産母の右の足の小指の尖の上に、灸小麦ほどにして三壮か、五壮すべし。
▲胎子、手足を出さば、針にて手足の心を、一分刺て、塩をぬり、徐に送入れば、子がへりして順に産す。
▲難産には至陰三壮、又太衝三壮。
▲子心へつき上り、悶えくるしむには巨闕、三陰交を瀉し、合谷を補すべし。
▲子心に衝き上り、痛み息ずは気衝七壮。
▲胞衣下らずは中極、崑崙、三陰交に針。

産後

▲産後の諸病には、期門。
▲悪露止ざるは気海、関元。
▲同腹痛ば、陰交百壮、気海に灸す。期門、伏兎、関元、腎兪。
▲悪露止まず、小便しぶり通ぜずは、気海に灸すべし。
▲両脇痛ば、石門五十壮。
▲耳鳴、腰いたむは合谷、光明。
▲血暈には支溝、三里、三陰交に針し、気海に灸すべし。
▲卒に口噤み、語音出でざるには、承漿五壮。
▲血気、倶に虚するには血海、百壮。
▲悪露行らざるは石門、三陰交、崑崙。
▲陰挺出づるには曲泉、照海、大敦に灸を。
▲産後手足水のごとく冷えば肩井に針五分。
▲乳汁通ぜずは、壇中に灸し、少沢より針すべし、前谷。
▲乳腫痛は、足の臨泣。
▲乳癰は下廉、三里、魚際、少沢、委中、足の臨泣、侠谿。
▲児の息が乳にあたりて、悪寒発熱するには百会。
▲子を妊むことを絶んと欲せば、合谷、右足の内踝の上一寸に灸。臍下二寸三分に灸三壮すれば、陽気消す。又肩井に灸すれば、永く妊まず。又関元、陰交、石門、合谷に針灸するもよし。

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底本:『鍼灸重宝記綱目』(京都大学附属図書館所蔵)
図は画像データより抽出し一部加工